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ものづくり基礎知識11 鋳鉄
2021年8月13日
鋳鉄はこれまでご紹介した炭素鋼や合金鋼と同様に鉄と炭素の合金ですが、含まれる炭素量が大きく異なります。
炭素鋼や合金鋼の炭素含有率が2.1%以下なのに比べ、鋳鉄は炭素を2.1~6.7%と非常に多く含みます。
機械部品や水道管やマンホールの蓋など、工業品から身の回りのものまで広く使用されています。
今回はそんな鋳鉄についてご紹介します。
鋳鉄の特徴
鉄は炭素量が増えるほど強度が上がるので炭素を多く含む鋳鉄は強く硬いのですが、硬さが増すほど一定限度を超えた力が加わったときに折れやすくなるため粘り強さを表す「靭性」については性能が落ちます。
そのため、炭素量の多い鋳鉄は硬さともろく折れやすい性質を併せ持つことになります。
たとえばフライパンを作る際には、他の鉄鋼材料をプレス加工で作る際には靭性に優れるために薄く軽く成型することが可能ですが、靭性に乏しい鋳鉄の場合には割れないように一定以上の厚さが必要になり重量感のあるフライパンとなります。
また、炭素量が多いほど溶ける温度が低くなるため、溶かして型に流し込んで成形する際に鋳鉄は比較的低温で実施することが可能になります。
鋳鉄はこのように鋳造(金属を熱で溶かし鋳型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法)を行い鋳物にするのが基本です。鋳物製品としては、身近なものではマンホールの蓋、茶道で使う釜、水道の蛇口や煮込み料理用の鍋などがあります。
このように溶かして使われるため、素材としては形状のバリエーションがなく、塊として出荷されることになります。
鋳鉄の種類とJIS記号
鋳鉄はJIS記号ではラテン語の鉄(Ferrum)と鋳物を指す(Casting)をつなげてFC、その後に引っ張りの強さの値が付き「FC200」など表記がなされます。また、この後に紹介するFCD材の場合はFCに「延性のある」という意味のDuctileを付けてFCDと標記します。
鋳鉄には代表的なものにねずみ鋳鉄(FC材)と球状黒鉛鋳鉄(FCD材)があります。
ねずみ鋳鉄(FC材)は「片状黒鉛鋳鉄」とも呼ばれ、硬さはあるものの伸びにくくもろいのが特徴です。そのため歩道用のマンホールの蓋など、それほど強度を必要としない場合に活用されます。
球状黒鉛鋳鉄(FCD材)は「ダクタイル鋳鉄」とも呼ばれ、強度を保ちながら靭性に優れた材料です。強度の高さが求められる自動車部品、水道管、車道用のマンホールの蓋などに採用されます。
種類 | 種類の記号 | 引張り強さ※ | 硬度 |
---|---|---|---|
N/㎟ | HBW | ||
ねずみ鋳鉄品 | FC200 | 200以上 | 223以下 |
FC250 | 250以上 | 241以下 | |
球状黒鉛 鋳鉄品 |
FCD450 | 450以上 | 143~217 |
FCD600 | 600以上 | 192~269 |
※圧縮強さは引張り強さの2.5~3倍
JIS G 5501参照。
ヒガメタルでは、各種鋳鉄の加工や取り扱いも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。