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ものづくり基礎知識29 研削加工/研磨加工について②
2022年11月30日
ものづくりの現場で加工物の表面をなめらかにする手法には、大きく分けて研削加工と研磨加工の2種類の加工方法が存在します。 今回は前回に引き続き、研削加工と研磨加工についての2回目です。
粒子を用いて行う研磨加工とは
砥石を用いて不要な部分を削り取り加工である研削加工に対して、研磨加工は粒子の状態である「研粒」を用いて加工を行います。 研磨加工にもいくつかの種類があり、代表的なものに以下の4つが存在します。
(a) バレル研磨
「バレル」と呼ばれる研磨槽に、研粒(硬度の高い粒状または粉末状の物質)を工作物と一緒に入れ、バレルを回転させることで工作物の表面の凸部分を削り取っていくのがバレル研磨です。 一度に大量の加工を行うことが可能で、さまざまな形状の工作物を比較的容易に研磨することができるため、バリ取りから鏡面仕上げにまで手広く活用される加工方法です。
(b) バフ研磨
綿や麻などの布でできたホイール状のバフ(研磨道具)の表面に研磨材を付けた状態で高速回転させ、工作物の表面に接触させて研磨するのがバフ研磨と呼ばれる加工方法です。バフに塗布する研磨材の種類や目の粗さなどを変えることで仕上がりの状態を細かく変更することも可能です。 バフ研磨では一般的な研磨だけでなくキズ消しや付着物の除去、表面の平滑化などの目的でも使用されます。
(c) ラッピング
ラップと呼ばれる平坦な円盤状の台に工作物をはさみこんで、研粒と油とを混ぜたラップ剤と呼ばれる液体を流し込んで上下から圧力をかけて研磨していくのがラッピングです。 研粒の種類や加工条件を調整して微量ずつ削っていくことで表面を高精度でなめらかに仕上げることが可能で、カメラや顕微鏡のレンズ、半導体素子の材料であるウェハーなどの加工に利用されます。
(d) サンドブラスト
砂粒などの細かい研磨材を圧縮空気で工作物に高速で噴射して表面を削りとる加工方法がサンドブラストです。
サンドブラスター(砂吹き機)と呼ばれる作業箱の中で加工することで工作物へ研磨剤を効率よく吹きかけることが可能になります。 バリ取りやさび落としや塗装はがしなどに活用されるだけでなく、鋳物や陶磁器やガラス工芸品などの表面処理や装飾を施す際にも利用されます。
完全に近い平面を作る”きさげ加工”
限りなく完全に平面に近い平面はさまざまな加工や組立の際に非常に重要な基準となり、加工もとって非常に重要な要素です。
そんな平面を作り上げるために表面を平らに仕上げる加工法がきさげ加工です。
きさげ加工は古くから職人が手作業で行ってきた技術で、金属に対しては17世紀の産業革命前後から施されてきたとも言われます。
これまで紹介した研削加工および研磨加工ではミクロンレベル(μm)での仕上がりには限界があり、工作機械でも数ミクロンレベルの平面度までは製作可能ですが熟練加工者の手作業によるきさげ加工では1ミクロンレベルでの平面を作り出すことが可能になります。
きさげ加工の手順は一般的に以下のようになります。
- 工作物の表面にオレンジ色の塗料(光明丹)を塗って薄く延ばす
- 基準となる定盤あるいは治具とこすり合わせる
- 凸部分は塗料が取れて金属の地肌が残り、凹部分はオレンジ色の塗料が残る
- スクレーパと呼ばれるノミ状の工具で凸部分(アタリ)を重点的に削りとる
- 求める精度に達するまで1~4までを繰り返す
加工後の仕上げ面には工具の種類や加工者によって独特の「うろこ模様」ができます。工具の軌跡や力の入れ方が異なるため、うろこの違いで加工者が特定できるそうです。
真の平面を作るための”三面擦り”
前段で挙げた
2.基準となる定盤あるいは治具とこすり合わせる
では平面度の高い定盤が必要で、これは「三面擦り」と呼ばれる3枚の定盤を用いた方法で作りあげます。
2枚の平面(図のAとB)できさげ加工した場合、仮に両方のそり具合がほぼ一致していると光明丹が均等に塗られていたとしても平面を確保できていないことになります。
そこで3枚目の定盤(図のC)を加えてこすり合わせることで、上記の問題を解決します。2枚では一致する可能性があっても、3枚目を加えることでそり具合が一致することはなくなります。組み合わせを変えながら何度かきさげ加工を実施して3枚のどれを組み合わせても凸が無い状態にすることで、真の平面を実現することが可能になります。
ヒガメタルは大田区のものづくり企業として、研削加工も研磨加工のご依頼もお引き受けしています。 お気軽にご相談ください。