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ものづくり基礎知識9 合金鋼 合金工具鋼鋼材と高速度工具鋼鋼材 (SK*材)
2021年7月12日
炭素鋼のSK材(炭素工具鋼材)と合金鋼のSK材(SKS、SKD、SKT、SKH材)は用途により使い分けられています。
5大元素[炭素(C),シリコン(Si),マンガン(Mn),リン(P),硫黄(S)]に、クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)などを添加することで耐摩擦性や耐熱性が高くなり、炭素鋼では満たせない要求を果たすことが可能になります。
使用用途としては合金工具鋼鉄材(SKS、SKD、SKT材)は丸のこや刃やすりやドリルなどの切削工具や、たがねやポンチなどの耐衝撃工具、ゲージなどの冷間金型、プレス型などの熱間金型に用いられます。
高速度工具鋼鉄材(SKH材)も元々切削工具用に開発された材料であるので切削用工具は当然のこと、耐摩耗性と靭性の高さを活かして金型などにも用いられます。
今回はそんな合金工具鋼鉄材と高速度工具鋼鉄材についてご紹介します。
合金工具鋼鋼材(SKS、SKD、SKT材)
炭素鋼のSK材にクロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)などを添加し、耐摩耗性、耐衝撃性、不変形性、耐熱性などを付与したのが合金工具鋼です。添加物の違いで計32種類の企画があります。
SKS材は「Steel Kogu Special」の略で、SKD材は「Steel Kogu Dice」の略で通称ダイス鋼と呼ばれます。SKT材は「Steel Kougu Tanzou」の略になります。
基本、すべての品種で焼入れ焼戻しを行うことになります。また、工具に使用されるだけあって非常に硬いので、鋼材の加工性はあまりよくありません。十分に合金工具鋼の性能を引き出すには正確な熱処理が必要となります。
高速度工具鋼鋼材(SKH材)
SKH材は「Steel Kougu High-speed」の略で、ハイス鋼とも呼ばれます。
主に切削工具に使われる鉄鋼材料で、SK材にクロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)などの金属材料を大量に添加して非常に硬いのが特徴です。工具鋼では耐摩耗性が最も優れた鋼材ですが、多種の金属材料を大量に添加しているため、非常に高価な材料です。
約600℃までは硬さが低下しないことが特徴です。それ以上になると硬さが急激に低下しますので、約600℃以下の条件下で使用することが前提となります。
種類の記号 | 化学成分(%) | 焼入れ焼戻し硬度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
C | Cr | Mo | W | V | HRC | |
SKS3 | 0.90~1.00 | 0.50~1.00 | ー | 0.50~1.00 | ー | 60以上 |
SKD11 | 1.40~1.60 | 11.00~13.00 | 0.80~1.20 | ー | 0.20~0.50 | 58以上 |
SKH51(旧SKH9) | 0.80~0.88 | 3.80~4.50 | 4.70~5.20 | 5.90~6.70 | 1.70~2.10 | 63以上 |
注) 主要な種類を抜粋。PとSの化学成分はすべて0.030%以下。SiとMnは省略。JIS G 4403,4404参照。
ヒガメタルでは、SUS材の加工や取り扱いも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。